ひこうき雲

大きな木の下で影にすっぽり入ったまま、とても眩しそうに目を細めて君は空を見上げている。

視線の先には真っ青な空に伸びるひこうき雲。その線は細いけれどしっかりと、そして真っ直ぐに引かれていて、先にはキラリと光って見える飛行機がぐんぐんと進んでいる。

地球の空は繋がっている。同じ空の下、そんな歌詞に出てきそうな言葉を頭の中で繰り返しながら視線を下に落とすと、君は少しだけ微笑んでいるように見えた。

空なんてどこでも同じかもしれない、気休めにそう自分を慰めてみた。本当はもっと近くに感じたいものも、何も感じられない。きっとほんの少しの距離で君の息づかいは聞こえなくなるだろうし、僕の息づかいも届かなくなる。

匂いや音、湿度や温度、すべて同じものが揃うと、もしかすると同じ場所に立っているのかもしれない。寂しさはいつだってあるけれど、そんなことにはお構いなしで日付変更線に向かって進んでいる。

口角を上げてみた。
悲しみも喜びも僕のもの。

手のひらで日差しを作りながら君が歩いてきた。
きっと、また会えるね、と。

水面に映された青空とひこうき雲を君の目に見た。

オトナ

『日曜日の夕刊 / 重松清』を読んでいます。

 子供の頃のイメージでは、三十七歳といえば完全にオジサンだった。たんに年をとるというだけでなく、どう言えばいいのだろう、なにか人生というものをしっかりと背負ったオトナ、そんな印象だ。
 だが、いまの自分は――。
引用:160頁セプテンバー'81

 この一文を読んで、本当にそうだと思っていて、昔は大人が、今の自分よりはうんと大人だった気がする。ただ、その当時の“大人”たちがどんな風に自分のことを思っていたのかはわからないのだけど……

あずかりやさん



明日町こんぺいとう商店街の中にある『さとう』と名前の入った暖簾がかかった預かり屋さん。1日100円でなんでも預かってくれる。店主は盲目の青年桐島さん。

様々な人が夫々の事情で色々な物を預けに来る。語り口が暖簾であったり、預かり物の自転車であったり、猫であったり。

とても読みやすく、すらすらと読み終わりました。
家の中の静けさ、そして冷たさ、温かさなど人の出入りによって変わる温度や時間の流れを感じるようなお話でした。
ただ深さをそれほど感じるお話ではなく、日常の流れの中で起こる預かり屋ならではのお話だと思います。だから、これはこれでとてもまとまっていて、深さがないところが良いのだと思いました。(私が感じないだけだろうと思います)

拍手お返事

夜陽様

あけましておめでとうございます。
今更ながらなご挨拶になってしまいごめんなさい。
メッセージ有難うございました。
お身体の具合は如何ですか。
まだまだ寒い季節ですし、本当に無理はされませんように。
また復活されたらゆっくり色々とお話できると嬉しいです。
私も更新を!といつも思いながらなかなかしておりませんので、ゆるっと今年もやっていこうと思います。
どうぞ宜しくお願い致します。ペコリ。

こんにちは、さようなら

 家につく頃には雨が降り始め、部屋に入る頃には雨足が強くなり始めていた。

 上着に降り落ちた雨粒を玄関で払い、靴を脱いで窓際へ歩み寄ると、雨粒が窓にあたりゆっくりと垂れている様をぼんやりと眺めた。

 さっきの君とのやりとりを思い出していると、胸に支えたもやもやとしたくすんだ色のなにかがぼたりと音を立てて落ちた。言葉にしたくても適当な言葉が見当たらず、自分の感情にすら敏感になれず、僕はただひたすら歩いて家まで帰ってきた。

 冬の曇天の下、首筋に感じる冷えた空気が徐々に熱をもち、息が上がり歩は速まり気が付けば最後の曲がり角が目の前にあった

 求めているものは何だろうか。
 君の、僕の。

 ごちゃごちゃな感情が入り混じって一つひとつ紐解く気にもなれず、僕は窓を離れて台所へ向かった。

 二つ並んだコーヒーカップは静かに雨の影を受けている。

 コーヒーカップを手にとって僕はそこに紅茶のティーバッグを落とした。お湯を注いでじんわりと染み出してくる様を見ながら寝室に向う。

 窓際に置いたコーヒーカップはやはり雨の影を受けている。

 目が覚めると部屋の中は真っ暗だった。
 雨の音は相変わらず強い。

 部屋のドアから漏れる光。

 怖くてドアノブに手をかけられず、結局はまたベッドに戻った。

 君との最初の言葉を考えると、僕は臆病になってしまう。